「にぎわい空間研究所」は、リアル空間にしかできない新しいビジネス価値の在り方を研究します

にぎわい空間創出FORUM2018<br />
Event Report

にぎわい空間創出FORUM2018

開催挨拶「革命的空間ビジネス新潮流」

2018.11.15facebook

編著:にぎわい空間研究所編集委員会
  
空間ビジネスの革新的モデルが
課題を解決し、未来を創出する

にぎわい空間研究所 所長 中郡伸一
 
 みなさん、こんにちは。にぎわい空間研究所の中郡伸一です。今日はたくさんのご来場をいただき、誠にありがとうございます。
 
「にぎわい空間創出FORUM2018」開催挨拶「革命的空間ビジネス新潮流」
 
「にぎわい空間創出FORUM」は今回で2回目の開催となりました。前回のフォーラムでは、リアルとバーチャルの融合による新たな空間のイノベーション「リバーチャル空間」について提言しました。
 
 今回のフォーラムのテーマは「空間革命」です。今、空間ビジネスに革命が起きています。空間活用の従来常識を覆す革命的空間ビジネスとは、どんなものなのか? その最新トレンドを徹底検証していきたいと思います。
 
 研究セッションのテーマを三つ設けました。一つ目は、「“お悩み資産”を宝の山に変えた『不動産革命』」。二つ目は「“シェアリングエコノミー”がもたらす『空間革命』」。三つ目は「“空間のクラウド化”が起こした『ライフスタイル革命』」です。この三つのテーマの研究の意図。そして、社会的背景についてお話をさせていただきます。
 

経済の成熟による既存事業の停滞で
大量に発生する“お悩み資産”を救うために
 
 まず、一つ目のセッションは「“お悩み資産”を宝の山に変えた『不動産革命』」です。今年はバブル崩壊から27年。リーマンショックからは10年の歳月が流れました。
 
 経済の成熟期を迎えた日本では、既存事業が停滞する傾向にあります。従来の不動産ビジネスの常識では事業化が困難な未活用空間が大量に発生しています。いわゆる「お悩み資産」です。
 
 そのお悩み資産の一番目は老朽化したビルです。東京23区内でもバブル期に完成した中規模ビルが55%に上っています。築年数の平均は30年を超えました。新たなリーシングに行き詰まったり、ビルのメンテナンスに多額のコストがかかったり、さまざまな社会問題を引き起こしています。
 
 

 二番目のお悩み資産は空き家です。日本の総住宅の13.5%が空き家になっています。総務省では2033年までに、総住宅の30.2%が空き家になると推計しています。家が10軒あれば3〜4軒が空き家になるのです。
 
 三番目のお悩み資産は空き地です。法人や個人が所有する土地の8.2%が空き地になっています。このようなお悩み資産が発生する背景にはさまざまな事情があります。例えば、相続時に土地が分割されて活用しづらいといった事情です。
 
 そのお悩み資産に脚光を当てて、斬新な発想と技術で未活用空間ビジネスに挑んでいる二つの事業があります。
 
 その一つは老朽化した中規模ビルを建て替えずに宿泊用のキャビンをビルトインさせることで、新たなキャビンスタイルのホテルに再生させた事業「ファーストキャビン」です。「コンパクト&ラグジュアリー」をコンセプトに、すでに日本国内に21店舗がオープンしています。
 
 二つ目は駐車場にしかならなかった空き地の上空に、オフィスや店舗、24時間営業のフィットネスクラブなどを設ける「コインパーキング+空中店舗」という、あっと驚く事業を創出したフィル・パークです。この二つの未活用空間ビジネスは、お悩み資産の救世主になっています。

不特定多数同士での資産や能力の共有を
実現した “シェアリングエコノミー”
 
 二つ目のセッションは「“シェアリングエコノミー”がもたらす『空間革命』」です。シェアリングエコノミーは所有から共有への消費価値の変革です。
 
 
 必要なものは、所有するのではなく、他人と共有すればいい。そんな消費経済の変革が起きています。
 
 シェアリングエコノミーの国内市場は、2016年には5,250億円に達しました。2025年には1兆円のマーケットになると言われています。
 
 その社会的効果として、遊休資産の活用、新規事業の開発、過疎地のライドシェアなど地域課題の解決、そしてモノを貸し借りする連携社会の創出、インバウンド効果の促進などが期待されています。
 
 
 シェアリングエコノミーはミレニアム世代の台頭によって、大きな市場を拡大させようとしています。このミレニアム世代というのは、2000年以降に成人、または社会人になる人々です。この世代は、シェアリングエコノミーは非常に経済的であり、合理的であるとともに、人々の交流を創出するものとして魅力を感じています。
 
 一方、親の世代、私ぐらいの世代は、シェアリングエコノミーに抵抗感を感じています。お金を払っても自分の資産にならないことや、人とのコミュニケーションが煩わしいことに抵抗感があるのです。
 
 このようにシェアリングエコノミーは年代によって、受け取り方がとても異なるという特徴もあるのです。
(出典)第1回シェアリングエコノミー検討会議 一般㈳法人シェアリングエコノミー協会提出資料
 
 シェアリングエコノミーは次の五つの分野に分類されます。農地や駐車場や会議室をシェアする「空間のシェア」。メルカリに代表される「モノのシェア」。ライドシェアなどの「移動のシェア」。自分の才能や技術を共有する「スキルのシェア」。そしてクラウドファンデングなどの「お金のシェア」です。
 
 
 シェアリングエコノミーのサービスのスキームは、基本的には、C to C(C to C / Consumer to Consumer)の個人間の取引です。供給者は、シェア事業者が提供をするプラットフォームに登録をします。
 
 受給者はプラットフォームにアクセスし、サービスの提供を受けます。シェア事業者は、サービスを提供した分だけ受給者から手数料をもらいます。このプラットフォームによるサービスは、供給者と受給者はお互いが評価し合うことで成り立っています。

 このトライングルのコミュニケーションはスマートフォンの登場によって可能になりました。  

 
 
 個人におけるスマートフォンの保有率は80%に達しようとしています。20代、30代では95%がスマートフォンを持っています。そして、SNSの利用率は70%を超えました。
 
 これまで見えなかった個人の資産や能力を、インターネットを通じてリアルタイムに不特定多数の個人間で共有することが可能になったのです。SNSの普及によって信用度を推し量りにくかったインターネットの向こう側にいる個人について一定の信用度が可視化されるようになりました。
 
 空間のシェアビジネスは、空間のマルチ活用によって空間事業の常識を覆し、劇的なパラダイムシフトを起こしています。空間ビジネスのイノベーター、「スペースマーケット」と「軒先.com」です。この二つの企業は、新たな空間のシェアによって、さまざまな事業を生み出そうとしています。

ネットを通じて無限のリアル空間の
活用を可能にした “空間のクラウド化”
 
 そして三つ目のセッションは「“空間のクラウド化”が起こした『ライフスタイル革命』」です。
 
「今だけ、あるだけ、この場だけ」という目の前にある空間だけが、これまでの空間の常識でした。空間のクラウド化によって利用者は、スマートフォンやタブレットを使い、インターネットを介してクラウド上にある無限のリアル空間を活用することが可能になりました。
 
 空間のクラウド化は「いつでも、いくらでも、どこでも」自分のモノをクラウド上に預けたり、インターネットを通じてモノを管理したり、または売りに出せるようになったのです。利用者はクラウド化した空間を自由自在に操れるようになったのです。
 
 空間のクラウド化によって新たな事業モデルを創出して、ライフスタイルを劇的に変化させた二つの事業があります。
 
 空間のクラウド化を確立させたクラウドストレージサービスの「minikura(ミニクラ)」。そして、クローゼットのクラウド化によって普段着のファッションレンタルを展開する「airCloset(エアークローゼット)」。この二つの事業は爆発的に利用者を伸ばして、さらに事業を拡大しています。
 
 
 この三つの研究セッションに、6人のファーストペンギンの方々にご登壇いただきます。さぁ、それでは早速、研究セッションを始めていきたいと思います。みなさま、最後までおつきあいのほどよろしくお願いいたします。ご静聴ありがとうございました。(了)

 

記事中の情報、数値、データは調査時点のものです。
 
 
 
 

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