「にぎわい空間研究所」は、リアル空間にしかできない新しいビジネス価値の在り方を研究します

にぎわい空間創出FORUM2018
Event Report

にぎわい空間創出FORUM2018

研究セッション①
“お悩み資産”を宝の山に変えた『不動産革命』

2018.12.06facebook

編著:にぎわい空間研究所編集委員会
「にぎわい空間創出FORUM2018」セッション①
 
従来の常識では収益化が困難な不動産を
斬新な発想と技術、営業努力で事業化する

 経済が成熟期を迎えた日本では、従来の不動産活用の常識では事業化が困難な「未活用空間」が大量に存在する。テナントが抜け始めている老朽化ビル。コインパーキングにしかならない空き地。誰も住んでいない空き家。  

 研究セッション①「“お悩み資産”を宝の山に変えた『不動産革命』」では、不動産活用の常識を覆す新発想で、不動産オーナーの課題を解決する斬新なビジネスモデルを実現化した2人のファーストペンギンが登壇する。  

 老朽化する中規模ビルを再生する独創的な宿泊特化型コンパクトホテル「ファーストキャビン」事業を牽引する来海忠男。そして、国内に数多あるコインパーキングの上空に着目し、その空間活用方法として空中店舗を創り出す「空中店舗フィル・パーク」を事業化した能美裕一だ。  
 
 従来の常識では収益を伸ばすことが困難な不動産を、斬新な発想と技術、営業努力で事業化する「未活用空間ビジネス」。その代表的なモデルを構築した2人のイノベーターが登壇する。  

【パネラー】
来海忠男(株式会社プランテック総合計画事務所 代表取締役社長/株式会社ファーストキャビン 代表取締役社長)

能美裕一(株式会社フィル・カンパニー 代表取締役社長)

【担当研究員】
那須野純志(にぎわい空間研究所 主席研究員)

【モデレータ】
池澤守(株式会社池澤守企画 代表取締役)
 

(文中敬称略)
 



再開発ラッシュが続く大都市では
中規模老朽化ビルの価値再生が必須

池澤:まずは、担当研究員の那須野さんにこのセッションの狙いについてお聞きしたいと思います。

那須野:改めまして、このコーナーを担当する研究員の那須野です。よろしくお願いします。セッションテーマ通りですが、お悩み資産ということは、当然事業化が大変だということですよね。同じ悩みを抱える不動産オーナーが少なくない中、登壇者の方々が独創的なアイデアで、とても収益の高いモデルにできたことや、どうやってチャレンジして、どうやってチャンスに変えたのか? その秘訣を、ぜひ、解明したく思います。

池澤:事業化の秘訣ですね。それでは、お悩み資産の収益化を成し遂げた不動産革命の発想の秘訣についてお聞きしたいと思います。
 まず、起業の狙いと経緯についてお伺いします。ファーストキャビンは、「空白の価格帯」を狙うマーケティング、旅客機をイメージしたスタイリッシュなデザインなど、非常に秀逸な発想だと思います。来海さん、いかにこういう発想が生まれ、実現されていったのでしょうか?

来海:日本は去年から人口が減り始めました。日本が生き残っていく大きな戦略として政府が動き始めているのは外国人です。観光分野では「インバウンド」と表現されます。外国人に日本に住んでもらい、旅行してもらい、国内の1億人を維持しなければ日本の将来はない、という方向に舵が取られています。
 
 人口が減っていくことで、オフィス人口はもっともっと減っています。少子高齢化で今まで働いていた人たちが引退をされている。それとバブルの崩壊以降、最近はアベノミクスで経済が持ち直しているものの、それでも日本経済は先行きが見えません。その中で、オフィスマーケットが拡大することは考えられません。
 
来海忠男(株式会社プランテック総合計画事務所 代表取締役社長/株式会社ファーストキャビン 代表取締役社長)
 
 本日の開催地である豊洲でもすごい開発が進んでいますが、東京駅周辺、丸の内などで大きな再開発が目白押しです。大阪、福岡でも同じような状況です。でも、マーケットは増えていない。床面積だけは、どんどん広がっていきます。既存の価値を再生しない限り、使えないビルはたくさんあると思いました。それが、9年前にファーストキャビンを難波大阪に1号店を開業した本当のきっかけです。
 
「ファーストキャビン 御堂筋難波」。かつてフィットネスで使用していたフロアを活用し、大浴場も設けた
 
 難波駅前でとてもよい場所にあるビルです。12階建てで低層部ではオーナーが店舗を営んでおり、最上階はオーナーのオフィスと住宅として使われていました。御堂筋に面している一等地にも関わらず、中層階にあるテナントの賃料が安い。それなのに空きが出始めた。将来、ホテル業は求められるはず。でも、新しい土地を買って建物を建てるのは難しい。そこで生まれたのがファーストキャビンです。

 
キャビン内で立ち上がれれば
「必ず選ばれる」という確信  

池澤:カプセルホテルではない、ビジネスホテルでもない、その中間の価格帯を狙うというユニークな発想はどのように生まれたのですか?
 
来海:弊社は設計会社として、ホテル業界の方々から設計の依頼を受けてきました。それらのお客様とはバッティングしてはいけない、と思っていたという事情がありました。
 
 最近、外資系のホテルもようやく登場しましたが、十数年前の当時、外資系のラグジュアリーホテルはありませんでした。いわゆる「御三家」と呼ばれている、「ホテルニューオータニ」「帝国ホテル」「ホテルオークラ」と同じスタイルのホテルが世の中にたくさんあったのですが、意外と経営が苦しかった。そこから出てきたのが、宿泊特化型のホテルです。「アパホテル」や「東横イン」が出てきました。その当時、さまざまなホテルカテゴリーが出来上がりつつあった時期だったのです。
 
 当時、9,000円から10,000円で泊まれるホテルの下のランクは、温浴施設の中にあるカプセルホテル、地方にある昔ながらのビジネス旅館でした。あまり快適でないそういった施設が3,000円から4,000円。その中間の価格帯に需要があるのではと思い、ビジネスホテルでもなく、カプセルホテルでもない「キャビンスタイルホテル」をその価格帯に作りました。
 
ビジネスホテルとカプセルホテルなど時間消費型施設の間にある「空白の価格帯」を狙ったファーストキャビン
ビジネスホテルとカプセルホテルなど時間消費型施設の間にある「空白の価格帯」を狙ったファーストキャビン
 
 最近の評価はカプセルホテルと比べられているわけではありません。そして、ビジネスホテルとも比べられていない、と外部の方からお聞きしています。もっと上のクラスを利用するエグゼクティブの方々が、「6時間しか滞在しないのに18,000円払う必要はない。ファーストキャビンでいい」と言って利用されるほどブランド価値を評価していただいています。

池澤:なるほど、素晴らしいですね。あの価格にして飛行機のファーストクラスに泊まれると思うと、なんだか嬉しい気がしますね。
 
来海:その当時、シンガポールエアラインが個室型ファーストクラスという導入を検討し始めていました。飛行機のファーストクラスも周辺の音は聞こえます。部屋に鍵がかかっているわけでもありません。ニューヨーク便であれば、50万円のビジネスクラスから100万円になってもファーストクラスを選ぶ人間の欲求があります。
 
 カプセルホテルでは立ち上がれません。立ち上がれるようになれば、それだけでファーストキャビンは選ばれると思い、天井高2.1mのキャビンを設計しました。
 
「ファーストクラスキャビン」の室内(左)。ロールブラインドで締め切ることのできる「ビジネスクラスキャビン」
「ファーストクラスキャビン」の室内(左)。ロールブラインドで締め切ることのできる「ビジネスクラスキャビン」(右)

池澤:そういう所にファーストキャビンの発想の秘訣があったのですね。ありがとうございます。
 

“アセットリッチ”の悩みを理解し
キャッシュを生み出す事業を具現化

池澤:次は能美さんです。フィル・パークは、コインパーキングの空中部分を未活用空間として捉え、地上に駐車場を残しつつ、2~3階建ての空中店舗を開発しました。しかも建物を作るだけではなく、コンサルティングから、企画、設計、施工、さらには入居するテナントの誘致も保証する"究極のワンストップサービス"を実現した素晴らしいモデルです。さらには、東証マザーズへの上場も果たしました。ところで、能美さんがこの事業に参画された当時は会社の経営は厳しい状態にあったそうですね。それをどのように乗り越えていったのですか?

能美:バブル崩壊後、コインパーキングが増えていきました。道路交通法の改正もあり、路上駐車の取り締まりがより一層厳しくなったことも背景にあり、駐車場の需要が高まり、増え続けているのです。老朽化したビルや住宅が取り壊され、その跡地にコインパーキングができるのですが、我々はそこに焦点を当てています。

 最初はとても簡単な発想で、コインパーキングの空中を店舗として活用すればよいというだけでした。街のあちこちにコインパーキングがある、その空中が空いている、もったいない。このもったいない空間をなんとかしたいという思いから、2005年に設立されましたが、最初の5年間は鳴かず飛ばずでした。そのうちにリーマンショックも起きました。売上がないのに、赤字だけが出続けていました。
 
能美裕一(株式会社フィル・カンパニー 代表取締役社長)
 
 2005年は第2次ネットバブルの頃でした。フィル・パークは「変わり種のビジネスだね」と出資する方もいましたが、稼ぐことができません。アイデアを具現化できないため、会社は厳しい状況が続いていたのです。

 私自身はベンチャーと新規事業しかやったことがありませんでしたが、当時のメンバーと親しかったこともあり、事業への参画を求められました。「能美 さん、会社潰れそうなんですけど、どうしましょう?」と言われたのです。

 じゃあ、潰れそうな時にどうするか? 会社の状況を見たとき、この会社は99%潰れると思いました。でも、結果的には参画して7年後に東証マザーズに上場しました。

 会社が厳しい状況を乗り越えていった経緯は単純です。今も掲げていますが、「ユーザーファースト」です。駐車場を所有する人たちはどうゆう悩みを抱えているのか? 老朽化ビルを取り壊した後、暫定活用としてコインパーキングのビジネスが生まれました。
 
ユーザーファーストの姿勢から業務領域を広げ、ワンストップサービスを実現するまでになったフィル・カンパニー
 
 コインパーキングを辞めて、何か別の事業を始めるのはハイリスクです。コインパーキングは売上を上げてくれます。でも、その売上が高い場所は固定資産税や都市計画税も高い。なので、本来の対応を先延ばしにしているだけに過ぎません。

 そこで、とにかくお客様の声を聞きました。お客様のほとんどは、アセットリッチです。資産(アセット)はあるけれど現金がない。周りからはお金持ちと見られるが、実際には現金が回らない。日本で土地を持つということは、何らかの活用に成功しなければならない。そのキラーコンテンツがない。ビルを建てるか、コインパーキングにするか、極端な選択しかない。
 
24時間フィットネスが出店する「フィル・パーク五反田」
 
 とにかくコインパーキングオーナーの元に通い続け、そういった悩みを理解し、フィル・パークの具現化に結びつけていきました。とにかく、ユーザーファーストの徹底でしかありません。
 

狭小地や変形地にも対応する
“一気通貫”のサービスを実現

池澤:逆に能美さんの参画前、フィル・カンパニーは「建てて終わり」という姿勢だったのですか?

能美:色々なやり方にチャレンジしていましたね。でも、それ以前に当時の弊社は信用がありませんでした。フィル・パークは、コインパーキングの上にテナントやオフィスなどの事業空間を作るモデルです。信用がなければ、誰も見向きもしてくれません。

池澤:土地は持っているけれど、現金はないアセットリッチのオーナーに、家賃収入をもたらすテナントまで保証する。それどころか、最初の土地評価から設計、建設、テナント誘致まで一気通貫で提供しています。そこが鍵なのでしょうか?
 
池澤守(株式会社池澤守企画 代表取締役)
 
能美:一気通貫でサービスを提供すること自体は、大手のデベロッパーであればしていることです。しかし、我々の特徴的なところは、土地面積が小さい狭小地や変形地に対応していることですね。

池澤:なるほど、そこが違いですね。
 

高度な専門知識でコストを抑え
老朽化ビルに30%もの利回りを

池澤:では、次は事業収益性について伺っていきたいと思います。お二人のビジネスは、独創的なアイデアに加えて、低投資で高収入を生む非常に画期的なビジネスモデルです。こういった提案によって、今、不動産オーナーの方々からどのような反響をもらっているのでしょうか。

来海:我々も「コインパーキングを駐車場としての同等の利益を残しながら、ファーストキャビンに出来ないのか?」と聞かれることがあります。でも、なかなか、そのようなものはできません。おそらく、フィル・パークのキーポントは、2階建や3階建だからだと思います。

 ファーストキャビンの事業収益性については、施設の広さ300坪、初期投資額3億円、利回り30%という数字を謳っていますが、これはすでにビルをお持ちのオーナーがファーストキャビンに衣替えする場合の数字です。3億円だと100キャビンぐらいなので、本来は150キャビンで4億5,000万円ぐらいの投資がよいと思います。その450キャビンであれば、毎年30%ぐらいのキャッシュが残っていくという意味です。
 
ファーストキャビのビジネスモデル

ファーストキャビのビジネスモデルはビルオーナーに投資回収の明確な目安を示した
 
 ただ、それをきちんと実現するためには苦労があります。世の中のほとんどの建物は「既存不適格建築物」(※1)です。事務所ビルをホテルに用途変更するときに、建物全体に遡及工事が必要な建物であれば10億、15億の工事費、もしくは建て替えた方がよいという話になります。
※ 1 建物を建てた時点では、法令の規定を満たしていたが、その後法令の改定により現行の法令の規定は満たしていない建築物

 そこで、建築設計事務所としてのソリューションを発揮します。現在の法令に適合させるために必要な工事は必要最低限にする、もっと言えばファーストキャビンの内装工事をすることで現在の法令に適合させてしまう。そういう仕組みが出来上がっているのです。だから初期投資を抑えられるのです。

 大阪の西梅田には147キャビンの建物があります。新築です。この建物は鉄骨の柱の大きさを10cm角で設計しました。そうでなければ、そこの敷地はファーストキャビンにならなかった。間口が10mで奥行きが100mという敷地で、線路の跡地ですから。10cmの鉄骨で構造設計ができなかったら実現できませんでした。
 
ファーストキャビン阪神西梅田(大阪市福島区)
 
 そういうソリューションで一つひとつの努力があり、ようやく先ほどの利回り30%が実現できました。新築では投資の10%ぐらいの利回りになっています。それが可能になったことで多くの方々からファーストキャビンへの転用が可能かどうかの相談が寄せられるようになったのです。今は、その相談が一気に増えている状況です。

池澤:すごいハイリターンですよね。その裏には建築的な苦労や工夫、ノウハウの積み重ねがありそうですね。

来海:そこがないと、なかなかできないですね。あるファーストキャビンでは、元々は商業オフィスビルでした。600坪ぐらいの建物です。実は600坪がファーストキャビンにとって最適です。その建物は外部階段と内部階段があり、内部階段はビルの一番よい場所にあった。建物の形としては長方形ですが、使える形がいびつでした。我々の武器は、2.1m×2.1mの「ファーストクラス」と、2.1m×1.2mの「ビジネスクラス」のキャビンを効率的に配置することです。
 
ファーストクラスキャビン
ビジネスクラスキャビン
「ファーストクラスキャビン」と「ビジネスクラスキャビン」の仕様
 
 600坪であれば150キャビンぐらい入らなければならないのですが、担当者から「どうしても、120キャビンしか入らない」と言われました。通常は、そこで終わります。私が考えたのは、法律を満たし、避難の安全性を確保したうえで、階段を撤去することでした。それと、1階に駐車場に行く大きな車路がありましたが、附置義務の整理をしました。結果として、600坪に150キャビンが入ったのです。

 階段を撤去する費用は300万円ほどでした。でも、120キャビンと150キャビンの30キャビンという違いが利益です。こういった建築設計のソリューションがなければ、30%の利回りには行き着きません。

池澤:深い努力と工夫を貫かれているのですね。
 

5cm、10cmの戦いを続け
駐車場を残し、店舗を創る

池澤:深い努力と工夫を貫くという点では、フィル・パークも同様だと思います。来海さんは「フィル・パークが成立しているのは3階で抑えているからだ」とおっしゃっていましたが、能美さん、どうですか?

能美:さすが来海社長です。それとお話を聞いていて、共感できることが多かったです。「2階から3階で抑えているから成立している」というご指摘はその通りです。

 来海さんが既存不適格建築物を手がけるときに5cm、10cmにこだわるように、我々も同じで、建物の高さが10mを超えるかどうかで大きく変わってきます。建築基準法や消防法などの諸法令の問題もありますが、10mを超えてしまうとコストや手間が増えます。そこで、最適解として、1階がコインパーキング、2階・3階が空中店舗というのが最も効率がよいのです。
 
「フィル・パーク 吉祥寺」「フィル・パーク 京都河原町」
(左から)「フィル・パーク 吉祥寺」「フィル・パーク 京都河原町」

 あとはいかに無駄を作らないか、です。よく「フィル・パークなんて誰でも真似できる」と言われます。建築物の設計だけであれば、そうかもしれません。しかし、コインパーキングを生きたものとして、収益を稼ぐものとして残すのが相当難しいのです。

 通常は、商業空間の建物で1階に危険物である自動車が入る駐車場を残そうとすると、工法は重量鉄骨造にほぼ限られてきます。重量鉄骨造であれば柱と柱の間が6m。コインパーキングは車の入る「車室」が幅2.5m、奥行き5mが1台の配分です。6mが一般的で10mの場合もあります。しかし、狭小地や変形地の物件が多いので安易には柱の間隔を広げられません。

 6mの枠で駐車場2台に5mを使い、柱が概ね40cm角で入っていくと、残りは20cmしかない。もう、5cm、10cmの戦いをしなければ駐車台数が減ってしまうのです。戦いに敗れると、従来10台置けていた駐車場が5台ぐらいしか置けなくなってしまいます。5cm、10cmの戦いをしている。それが自分たちの強みです。誰も駐車場の上に店舗を作ろうなんてしません。

 土地オーナーは、もともとコインパーキングだったので、その収益が残るのであればローリスクになる。その上で空中にテナントを設けられれば、ミドルリターン、ハイリターンになっていく。
 
土地活用におけるフィル・パークのポジショニング
 
 そこが鍵なので、寝ても覚めても図面との睨めっこです。僕自身は設計士ではありませんが、ひたすら考え、設計士と一緒に考えます。そこまで努力する設計士がいなんですよね。そこを頑張っているのが、事業収益性を高められている秘訣だと思います。
 

真っ暗な裏通りに
明かりが灯り、賑わいが生まれる

池澤:「10cmの美学」にこだわられている、ということですね。一方で、フィル・パークの立地を見ると、一本裏に入ったエリアや商業の賑わいが途切れた薄暗い場所が多いですね。ああいったロケーションにどうやってテナントを連れてこられるのですか?

能美:我々の手がける物件はほぼそういった立地です。コインパーキングの立地は一本裏手、今は二本、三本裏手にあります。そういった立地の方がビルの取り壊しは進んでいます。裏手の立地では土地の活用を諦めて、コインパーキングが進んでいったという事情もあるのです。

 コインパーキングは、日中は稼働します。とてもよい賃料を稼ぎます。しかし、夜になると真っ暗になってしまう場所にあります。商売柄、いつもコインパーキングが気になりますので「ああ、また真っ暗な場所にある」と思うことはよくあります。そして、「こんな人通りのない場所にテナントを誘致しなくちゃいけない、どうしよう?」と。小型の店舗であれば、ナショナルチェーンは出店しません。

 でも、そこを常に逆手に取っています。夜行くと真っ暗な場所にスタイリッシュなガラス張りの空間を造っていく。1階がコインパーキングなのですごく目立ちます。上階で賑わいが生まれ、人がいて、明かりが灯っている。こういう空間をどんどん造っていったので、それがイメージ化されていきました。
 
「フィル・パーク荻窪」の建設前
「フィル・パーク荻窪」の建設後
「フィル・パーク荻窪」の建設前と建設後。1階を駐車場空間として残し、駐車台数をできるだけ確保した

  実際、駅前や一等地はナショナルチェーンの取り合いで、賃料も高い。裏手であればその周辺と賃料が同じでも、かなり目立つ店舗になります。そこが評価されています。会社としては色々な提携はしていますが、フィル・パークが有名になってくると、かなりこだわりをもったお店を経営したい方からの問い合わせも増えきました。最近では、以前ほどはテナント誘致で苦労はしていません。

池澤:素晴らしいですね。
 

「アジアは内需」と位置づけ、
グローバルに展開を図る

池澤:最後に、今後の可能性と展開についてお伺いできればと思います。日本経済も成熟期を迎えています。今後はますます従来の常識に捉われない、斬新な手立てをしていかないと、不動産活用はできない時代になっていきます。お二人に伺いたいと思いますが、今後の可能性についてどうお考えでしょうか? 来海さん、よろしくお願いいたします。

来海:将来、日本のマーケットは小さくなっていきます。ファーストキャビンだけでなく、プランテックの合言葉は、「アジアは内需」です。ベトナムに約20人、タイに約15人のローカルスタッフがいます。インターネット、スマホが主流の時代になると、北海道でも、九州でも、そしてアジアでも、物理的距離は変わりません。アジアで我々のファーストキャビンを展開していきたい。
 
GROUP HOTEL

 2022年までに100施設と紹介いただきましたが、毎年10施設から15施設の開発スピードになっています。そこに入り込んでいきたいと思っています。

池澤:ありがとうございます。グローバルな展開ですね。
 

人口減少社会で求められるのは
“スペース・オン・デマンド”

池澤:能美さんは、いかがですか?

能美:国内には今、コインパーキングが6万カ所以上あると言われています。私の感覚としては、10万カ所以上あります。フィル・パークもようやく夜が明けて、本格的に動き出し現在の物件数は百数十件。まだ、市場の0.2%〜0.3%ぐらいです。
 
2005年から2015年にかけての全国のコインパーキング箇所数の推移。(一般社団法人日本パーキングビジネス協会「平成20年3月コイン式自動車駐車場市場に関する実態調査」「平成24年3月コイン式自動車駐車場市場に関する実態調査」「平成27年3月コイン式自動車駐車場市場に関する実態調査」より)
 
 日本では土地を持っていても、何の活用もしなければ税金を払うだけです。土地を売却して税金を払わなければならない事態に陥ります。オーナーさんたちの悩みにこれからも応えていきたいです。そういったオーナーさんたちに育ててもらったという意識もあるので、一つひとつ造っていきたい。
 
能美氏が担当した「フィル・パーク 名古屋栄」(平成23(2011)年9月竣工)。
テナントには世界的ファッションブランド「ARMANI EXCHAGE」が出店した。
 
 フィル・パークの評価は、投資回収の速さもありますが、もう一つは我々がやってきた「スペース・オン・デマンド」です。需要に応じた空間づくりです。昔は、建ぺい率や容積率に対して目一杯の建物を造っていました。でも、造り手は5年後、10年後のことは考えていません。人口減少はこれからもっと加速していきます。その人口減少時代になったとき、やはり需要に応じて空間を提供できることが強みになると思います。

池澤:楽しみですね。6万カ所の半分ぐらいはフィル・パークにしていただきたいですね。
 

来夏、京都二条城店の開業で
さらなる進化を遂げるキャビン

来海さん、最後にお願いします。

来海:ファーストキャビンの将来にも少し絡むことです。まだ内容は発表できませんが、キャビンが大きく変わります。我々にとって一番の素材であるキャビンは常に進化させており、その一環としての変化に取り組んでいます。日本の法律変更とも絡めている大きな改革を行います。

 今回のフォーラムを共催されているフジヤさんの京都本社で、ファーストキャビンのオーナーになっていただく計画をしています。来年の夏前後には二条城の向かい側の少し入った場所に京都らしさを取り入れながら、ファーストキャビンのフラッグシップになるような店舗を設計しています。そこでは、より安全で、より快適になった新しいキャビンをそこで展開し始められるのではないかと思っています。二条城のファーストキャビン、どうぞ、よろしくお願いいたします。
 
 
フォーラム会場のホワイエでは両社の事業紹介とともに来夏開業のファーストキャビンの外観イメージが紹介された
 
池澤:それでは、担当研究員の那須野さん、最後にまとめをお願いします。

那須野:私も本業(内装ディスプレイ業)の立場で言えば、登壇者の方々とは同じモノ作りの立場です。作るだけでは終わらない、まさに「空間活用ビジネス」ですね。これに尽きます。さまざまなクライアントさんの事業にプラグインしたからこその“モノづくり”で終わらない“コトづくり”、さらには“トコロづくり”なのですね。感服いたします。成功するまであきらめない姿勢には背筋が伸びます! 見習いたいものです。
 
那須野純志(にぎわい空間研究所 主席研究員)
 

池澤:ありがとうございました。お悩み資産を宝の山に変える不動産革命。その未来に大いに期待したいと思います。ありがとうござました。
 
 



【Q & Aセッションでの質疑応答】
 

都市圏で増加する女性客
観光地ではファミリー客室を強化

質問者:実は昨晩、築地にあるファーストキャビンに宿泊しました。利用客はサラリーマンの方が多いと感じました。ファーストキャビンのターゲットはどのような層でしょうか?

回答者 株式会社ファーストキャビン 執行役員 兼 社長室室長 塚本 悠

塚本:場所によって客層は異なります。都内では、仕事の後、帰れなくて利用する方が多い実態があります。近年、女性の利用率が上がってきていて、女性の方が多い施設もあります。
 
塚本悠(株式会社ファーストキャビン 執行役員 兼 社長室室長)
 
 京都のファーストキャビンは旅行目的の方が中心で、友達同士の利用が多いです。海外からのインバウンドも京都は多い状況です。最近では、ドアの鍵が閉まるファミリータイプの部屋も少しずつ増やしています。社長の来海からは「常に挑戦をしろ」と言われています。我々が想定していなかったお客様を誘致するには、どうすればよいか? その施策として取り組んでいます。

 都内の主要駅の周辺では、相当、お仕事帰りの方が多いです。20時から23時が一番ピークの予約時間で、非常にアクセスが多くなります。ですので、施設担当者は、予約の入り具合をみながら若干価格を調整することもあります。(了)
 

 
 

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