日本の産業と社会は今、共有型経済「シェアリングエコノミー」の登場によって劇的なパラダイムシフトを遂げようとしている。
シェアリングエコノミーとは、「個人等が保有する活用可能な資産等(スキルや時間等の無形のものを含む)を、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」である(※1)。
つまり、「事業者から消費者へのサービス提供(B to C / Business to Consumer)」という既存の経済システムは、シェアリングエコノミーによって「消費者から消費者へのサービスの提供(C to C / Consumer to Consumer)」へとシフトしているのだ。
シェアリングエコノミーのカテゴリーは大きく分けて「空間」「モノ」「移動」「お金」「スキル」の5つである(お金とスキルを合わせて「リソース」とし、4カテゴリーとする場合もある)。
サービスの提供者と利用者のマッチングは、「シェア事業者」によって設けられたインターネット上のデジタルプラットフォームを通じて行われている。シェア事業者は利用料の支払いを仲介し、マッチングの手数料を徴収し、収益としている。
現在、世界ではシェアリングエコノミー市場は爆発的に拡大しており、平成25(2013)年に約150億ドルだった市場規模は、平成37(2025)年には約3,350億ドル規模へと成長すると予測されている(※2)。
また、日本国内でのシェアリングエコノミーの市場規模は年間18.0%で成長し、平成33(2021)年度には1,070億9,000万円に達するという推計もある(※3)。
シェアリングエコノミー市場の規模拡大の背景には、「欲しいものは所有せず、他人と共有すればよい」という消費者の価値の変化がある。
とりわけ、その傾向は「ミレニアル世代」に強い。ミレニアル世代とは、2000年以降に成年期を迎えた、情報リテラシーに優れ、多様な価値を受け入れる傾向にある世代であり、現在の20歳代から30歳代半ばの若者たちである。
ミレニアル世代は、他の世代と比べてフリマアプリの利用頻度が高いなど、「自分のものを他人に共有したり、他人のものを間借りすることに抵抗はない」という傾向が強い。総務省の『情報通信白書』では「若年層はリアル空間においてもシェアリングへの抵抗感が低い可能性がある」と指摘している(※4)。
今後、ミレニアル世代が社会で決定権を持つ層になっていくにつれて、シェアリングエコノミーはより一層の深化を遂げていくことが予測される。その先の未来には、「所有」から「共有」へと、消費のあり方を根底から変えてしまう”消費革命”が待ち受けているのかもしれないのだ。
今回のレポートで取り上げる「スペースマーケット」は、未活用空間の利用をマッチングするシェア事業者である。すでに1万2,000件のロケーションが登録され、パーティや撮影、イベント、宿泊などの膨大な数のマッチングが行われている。その利用は急速に拡大しており、平成29(2017)年は成約ベースで前年同月比300%もの伸びを示している。
約1,000万件存在していると言われる収益化が可能な国内の遊休スペース。スペースマーケットは、巨大なC to C空間シェア市場の開拓へ果敢に挑戦し、新たな市場の創出を牽引するマーケットリーダーとしての地位を確立しつつある。未活用空間ビジネスの今後を予測する上でも同社の動向から目が離せないのである。