「にぎわい空間研究所」は、リアル空間にしかできない新しいビジネス価値の在り方を研究します

「銀座NAGANO」(店舗/公共施設)/長野県
総 説
Report_Case01

「銀座NAGANO」(店舗/公共施設)/長野県

地域ブランドの新しい磨き方
〜ブランド価値向上を目指す長野県の挑戦〜

2016.04.21facebook

戦後、観光王国として高いブランド力を誇ってきた長野県。しかし、近年は、他県の発信・PR戦略に遅れをとり、その存在感を示すのに苦難を強いられてきた。起死回生を図るために長野県では、平成24(2012)年に「信州ブランド推進室」を設け、イメージ向上の施策を打ち始めた。
 鍵を握るのが東京に設立が計画された「信州首都圏総合活動拠点」、後に「銀座NAGANO しあわせ信州シェアスペース」と呼ばれる情報発信の施設である。都道府県の多くは東京に物産品を販売するアンテナショップを設け、地域振興につながるマーケティング活動を行っている。だが、長野県ではあくまで「ブランド磨き」を主眼とした施設づくりにこだわった。私もクリエイティブディレクターとしてプロジェクトに参加させて頂いた。
 プロジェクトが選定したビルの立地は銀座。それも、銀座4丁目の交差点から徒歩1分以内のロケーションである。東京の伝統の香りが漂い、世界最先端のファッションが集積する銀座こそが長野県というブランドの価値を磨く場所として最適であると判断したのだ。新築ビルの1、2階と4階を確保し、ショップやイベント、観光情報案内、移住相談、ビジネス交流などの機能を設けた。3階にも長野県の食材を使う和食レストランが出店し、複合施設として信州を体験し、長野県の魅力を発信する拠点が出来上がった。
 特筆すべきはまず洗練された施設デザイン。1階のショップはワインバーとも見まがえるほどスタイリッシュだ。店内では、長野県のライフスタイルの紹介を通じて、商品の裏側にいる「人」を伝えることをコンセプトとした。接客面でも、長野県にゆかりのあるスタッフが積極的に来店客に話かけながら、血の通ったコミュニケーションが行われている。
 もう一つのポイントは2階のイベントスペース。日替わり、もしくは時間帯ごとに、長野県内の自治体や関連する団体のイベントが行われている。事務局では、自治体とともに銀座で行うにふさわしい企画とは何かを議論し、イベントを一つひとつプロデュースする。訪れた人々はショップでの買い物を楽しみ、そして2階のイベントで長野の人々に触れるのである。
 銀座NAGANOは、これまで都道府県が設けてきたアンテナショップとは似て非なるものだ。銀座のど真ん中で長野県の人とモノの情報発信を行い、長野県の価値を県民自らが知り、そしてブランド力を育成する。長野県の営みを首都圏の人々と共有し、双方向の関係を作る場が出来たことの波及効果は、商品開発、観光客誘致、そして将来的には移住の原動力となっていくだろう。
 銀座NAGANOの挑戦は、地域ブランドの新しい磨き方を提示するとともに、既存業態の新しい活かし方を教えてくれた。リアルの未来のためには、旧来の常識を捨て去る勇気が求められているのである。
 

 

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